採用と結婚、退職と離婚


横浜市青葉区の社労士の澤辺です。

よく、就活をお見合い、就職を結婚なんていう言われ方がされます。

企業側から見れば、採用(応募者側に入社受諾されて)が結婚ということですね。

今は、終身雇用なんていう時代ではありません。応募者側と違い、企業側は結婚だけではなく、離婚時=退職のことも考えなければいけません。

採用→企業が内定出さなければ入社出来ない=企業有利
退職→社員が辞めると言うか、合理的な理由で解雇(難しい)=社員有利

という構図です。

いつも社員から辞めると言い出す円満離婚ばかりではありません。

解雇という名のドロ沼離婚もあります。

弁護士ではありませんので、離婚を扱っているわけではありませんが、断固として、離婚届に判を押さないとか、離婚は認めるけど慰謝料をたくさん欲しいとか様々なドロ沼具合があると思います。

同じように、解雇でも、「そんなの不当解雇だ!!!」と言って断固拒否・労基署に駆け込んだり、地位確認や、ここぞとばかりに未払い残業代を請求されるケースだってあります。(もちろん、解雇にしても、そのまま何も起きないケースも多々あります。)

何はともあれ、好きで結婚して、こういう離婚の仕方って悲しいですよね。

結局のところ、有効な手立ては、「採用時に細心の注意を払う」これしかありません。

有利なのは採用時だけです。この時に「とりあえず採用」というのが後々仇となります。

人が集まりにくい、人が足りない、様々な状況があることは理解しています。
良い人材は別として、特に気を付けたいのが当落選上にいる人材です。

その人材が落選側の人材だった時、会社にいるだけで常態としてマイナスが確定です。周囲の人を悪い意味で巻き込み、優秀な人がどんどん辞めていく可能性だってあります。今より状況が悪くなります。

ただし、採用しなければ、現状キープすることは出来ます。

「今」「その人材を」「どうしても」採用しなければならないのかを、よく検討されてみて下さい。

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数字を読み解く①【採用編】


横浜市青葉区の社労士の澤辺です。

先日、労働関連のニュースをチェックしていたら、大学生を対象とした企業選びのポイント等に関するアンケート結果が掲載されていました。
それは、茨城労働局によるアンケート結果でして、母数とすれば決して大きくはありませんが、昨今の学生の志向が表れている結果となっていました。
茨城労働局の学生に対するアンケート結果

1~4年生全体や、男女別、1・2年生、3・4年生などで分けて掲載されていますが、企業選びで一番重要視するのが、いずれも1位が「労働環境」2位が「休日・休暇」という結果になりました。このTOP2で実に30%前後を占めています。

「賃金」で負けているから集まらないとお考えの採用ご担当者様は多いと思います。しかし、このことから、「賃金」ばかりがPRポイントにならないことが分かります。(もちろんPR要素の1つではあります。)
仮に全国で統計を取ったとしても、時代背景も踏まえますと、「賃金」が1位ということはないでしょう。

「賃金」が平均前後をキープしていれば、「賃金」だけが良い会社よりも、「労働環境」「休日・休暇」が良い条件である会社の方が魅力的に映りやすいということです。

しかし、アンケートのTOP2ばかりPRすれば良いかというとそういうわけでもなく、やはり、そのバランスが必要です。
「労働者に優しい会社」は素晴らしいことですが、そこを通り越して、「労働者に甘い会社」と見られるのは考えものです。

御社や、御社の業界ならではの仕事の厳しさがあるはずです。

そこをしっかり訴求した上で、母集団を形成しないと、応募人数こそ多くても、その質が伴わないという事態になります。

大きい母集団を形成するのが目的であれば、TOP2を訴求すれば良いだけですが、目的は母集団形成でも採用でもなく、採用後に活躍してもらうということです。

手段ばかりを見て、目的を見失わないように、ブレのない採用活動をしていきましょう!

※今回はあくまで、学生に対するアンケートです。中途採用時は、当然ですが、会社選びの最重要ポイントは変わってきます。

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未払い残業代の時効が2年→5年になる?


横浜市青葉区の社労士の澤辺です。

もうすぐサッカーワールドカップが始まりますね。
ワールドカップはスポーツのビッグイベント、この次のビッグイベントと言えば、、、
そう、スポーツの祭典、2020年東京オリンピックです。

なんてことを考えていましたら、2020年といえば、もう1つ大事なことがありまして、
4月に民法の大改正が行われ、債権の時効が5年になります。(120年ぶりの大改正!なんて言われ方もしていますね。)

これに伴い、労働基準法の賃金債権消滅時効(労働基準法115条では現在2年、退職金は5年)、いわゆる未払い残業代とかそういった賃金債権も含め、民法に合わせて5年にするべきかという議論がなされている真っ最中です。
去年の記事ですが、日経でも取り上げられています。

この記事を書いている2018年6月8日現在、具体的なことは、まだ何も決まっていない段階ですが、世の中の流れからして私見としましては、5年になっていくのではないかなぁと思っています。

だからこそ、今のうちに、整備出来る部分は整備を進めていくべきだと思うのです。

未払い残業代は2年であっても遡及して支払いをすればかなりの額になりますが、これが5年と考えるとゾッとします。

早ければ早い方が良いです。

まずは、最低限、適正な労働時間の把握・管理はしておきたいところです。(労働時間管理をしていない会社は意外と多いです。)
そして、正しい残業代計算。もちろん、むやみに残業が多くならないように生産性向上も考える必要があります。

税務・会計に比べますと、労務は後回しにされがちですが、少しずつでも確実に対策をして頂ければと思います!
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就業規則の作成で気を付けること②


横浜市青葉区の社労士の澤辺です。

就業規則の作成で気を付けること、前回は、言葉の定義についてお話しました。
前回の就業規則の作成で気を付けること①はこちら

今回は、出来ない約束はしないということについてです。

就業規則に書いたことは約束事です。
従業員に対する包括的な契約書という言い方も出来ます。

例えば、昇給時期を毎年4月と定めたら、それは毎年4月に定期昇給するということですし、賞与を毎年〇月に×カ月分の月額給与を支給すると書いたらその通りにしなければいけません。業績が良くても悪くてもです。

このような就業規則を拝見することがありますが、非常に恐いことです。

1回作ってそのままの就業規則は、出来ない約束が書きっぱなしのケースがよくあります。
もちろん、直近の法律にも対応していませんので、当時せっかく法律通りに作ってあったとしても、現在その通りにしようとすると、知らずのうちに法違反、、、なんてこともあります。

助成金のご相談もよく受けますが、最低限の条件がいくつかあります。そのうちの1つが就業規則がきちんと整備されていることです。

もちろん、助成金をもらうために就業規則を整備するわけではありません。社内のルールをはっきりさせる、基準をはっきりさせる、社員からすれば気持ちよく働くため、経営サイドから見れば会社を守ったり、リスクを減らすために整備するのです。
ですが、これから作成したり、部分的に作り直したりということをお考えでしたら、せっかくであれば助成金対応で作成して、最大限就業規則を有効活用した方が良いことには違いありません。

ただし、出来ない約束は規定してはいけません。出来る約束だけ書かれた就業規則を作成して下さいね。

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上司には結果責任が、部下には行動責任がある。


横浜市青葉区の社労士の澤辺です。

今回は責任についてのお話です。

何か問題が起きると「責任問題」がついてまわりますよね。

私は、責任に関してはざっくり2パターンあると考えています。
すなわち、上司は結果責任を持ち、部下は行動責任を持つということです。

この両者は分けて考えるべきだと思います。

例えば、プロ野球で、監督(上司)が盗塁のサインを出したとします。
選手(部下)はサイン通りに盗塁を試みましたが、アウトになりました。

こんな場面があったとします。

盗塁アウトの責任=結果責任=監督の責任
盗塁を試みるという責任=行動責任=選手の責任

盗塁を試みた段階で、選手としての責任は果たしています。この盗塁が勝敗を左右するような盗塁であっても、
アウトになった結果の責任は選手ではなく、監督にあります。

アウトになった責任は監督にあるなんて当たり前のように聞こえますが、試合後、結果責任も選手にあるかのような発言をする監督がいます。

怖いのは、知らずのうちに、これを一般的な会社の上司と部下の関係においてもやってしまうということです。

営業であれば、上司には、部下の結果に対する責任および結果を出させる責任がありますし、他方部下は、結果が出るための行動をする責任があります。

そのつもりはなくても、上司に「何で売上が目標に届かないんだ?!」という結果の部分ばかりを指摘されたら、部下から見れば、それは結果そのものを責められていることと同じです。こういったやりとりが、信頼関係を損なってしまうことにつながっていきます。

指摘するのであれば行動の部分です。それも「行動が足りない」という頭ごなしではなく、「行動の何を改善していけば良いのだろうか?」と考えさせる方向に持っていくのがベターです。それは数量なのかもしれませんし、質なのかもしれません。そもそも可能性の無いところに対して行動してしまっているのかもしれません。

充分にヒアリングした上で、改善案を出させ、その上で適切なアドバイスもして、「じゃあこれでやってみよう。(行動責任)もしこれでダメならこれでGOを出したオレが悪い。(結果責任)だから、また目標に届かなかったらどうしようとか考えずに思いっきりやってくれ(行動責任)」

くらいのことをあえて言葉にして伝えれば、「この人は信頼出来る、守ってくれる、ここまで言ってくれるなら、よし!やってやろう!」という感じになります。もちろん、1回だけではなくて、信頼関係は積み重ねが大事です。

繰り返しになりますが、結果を責めてしまう、というのは無意識のうちにやってしまいがちです。
今一度、日々のご自身を振り返ってみて頂ければ幸いです。

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採用選考の意外なキーパーソンとは


横浜市青葉区の社労士の澤辺です。

御社も日々、良い人材を採用しようと奮闘されていることと思います。

応募者側は、かなりの情報を持ち、充分な対策をしてきます。
その対策に負けないような面接官の育成もされていることと思いますが、今回は、面接スキルとはちょっと離れたお話をしたいと思います。

採用選考において、面接官が重要なのは言うまでもないですが、その前段階で重要なキーパーソンがいます。
それは「受付」の方です。

受付の方はあくまで受付が仕事ですので、面接スキルは持っていません。
ただ、社内で一番多く人(来社される方という意味です)に会っているのは受付の方です。

受付の方は、来社される方と接する時間で言えば、数分もありません。
会話らしい会話はほとんどしませんが、何より、来社する方についての印象を抱きます。

これがけっこう鋭いものでして、面接官が抱く印象と大きなズレがないことが多いです。
受付時に接する一言、二言の話し方や表情などから自然と感じ取れるようです。

ですから、受付の方に、その応募者の印象を聞いてみて下さい。
想像通りの答えが返ってくることもありますし、面接時には決して見せなかった姿が見えてくることもあります。
きっと参考になると思います。

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有給の買い取りは原則禁止


横浜市青葉区の社労士の澤辺です。

よく、有給休暇(以下有給)の買い取りについて聞かれることがあります。

誤解されやすい部分ですので、丁寧に説明をさせて頂きたいと思います。

さも、当たり前のように言われている有給の買い取りですが、これは原則禁止です。
※昭30・11・30基収4718号より(基収とは厚労省労働基準局長が疑義に答えて発する通達のことです。)
「年次有給休暇の買上げの予約をし、これに基づいて法(労働基準法のことです)第39条の規定により請求し得る年次有給休暇の日数を減じ、ないし請求された日数を与えないことは、法第39条違反である」とされています。

なぜかと言いますと、有給休暇とは、本来リフレッシュのための休暇で、心身の疲労を回復させることが目的の制度だからです。買い取りはその目的に反することになります。休むことが制度の趣旨です。

ということを大前提に話を進めていきます。

有給の買い取りが特に話題になりやすいのは、退職の場面です。

現在を6月2日、退職日が6月30日、残有給日数が40だとしましょう。

残りの出勤日を全て有給に当てたとしても、何日分か残ってしまいます。

その結果的に残ってしまった何日分かの有給を買い取ることは違法とはされていません。
違法ではないだけですので、退職時の有給買い取り請求に応じる義務はないということでもあります。(←ココ重要です。)

ただ、合法とか、違法とかの話の前に、有給が残ってしまった場合、まずは話し合いが一番です。

どのような流れで、有給が残ってしまったのかによって、対応は変わってくると思います。

例えば、会社側が常態として、有給をとらせないというスタンスで残ってしまうのか、有給がとりやすい環境なのに、労働者側が残日数を把握しておらず残ってしまうのか、退職時に有給が残ったら買い取ってもらうのが当たり前というスタンスで残ってしまうのとでは、全然意味合いが違ってきます。

残有給の買い取り請求があった場合は、今日の記事を参考にされてみて下さいね。

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採用時に給与面をPRし過ぎてはいけない理由


横浜市青葉区の社労士の澤辺です。

「人が集まらないから、給与面を上げた方がいいなぁ。。。」という声をよく聞きます。
これは状況によりけりだと思います。

例えば、御社の給与が業界水準と照らし合わせて平均的で、かつ、既存社員と比べてもおかしいところはない、
という状況だとします。

そして、「よし、それじゃあ、他社より良くして給与面をPRすれば、競合より頭1つ抜けるから人材がたくさん集まるぞ」
という感じの場合、私でしたらそれを止めます。

たしかに、集まるか集まらないかで言えば、集まるようになると思います。
でも、なぜ集まるようになったか?という点を考えてみますと、それは、
「給与面が良いから」ということに他なりません。

別に給与面が動機でもいいでしょ?という声もあるかと思います。
もちろん、立派な動機の1つですから、動機それ自体を否定するつもりはありません。

私が言いたいのは、給与面を上げて、無事採用したその後の話です。

お金で集まった人材はお金で去っていくという傾向があります。

短期的には、欠員もなくなり、(採用した人材が能力があるという前提で)しっかりと貢献してくれるはずですから良いと思います。

ただ、長期的に見ますと、もっと給与が良い会社があれば簡単にそちらへ転職する可能性もありますし、
既存社員との給与バランスが悪いので、既存社員が不満を抱くことにもつながります。
(採用した人材が言わなくても、どこからどう情報が漏れるか分かりませんし、採用した人材と既存社員同士で給与面の話をするというケースだって体験上あります。)

ですので、上記のような状況下では、単に給与面を上げるということは根本解決にはつながらないと感じます。

もし、給与面を上げることで、人材を惹きつけようとする場合は、今回の記事の可能性を考慮したうえで実施して頂ければ幸いです。

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残業代計算の盲点


横浜市青葉区の社労士の澤辺です。

盲点というか、意外とそれと知らずにやってしまっている会社を散見しますので、書かせて頂きます。

1カ月あたりの残業時間の出し方ですが、御社はどのようにされていますでしょうか?

例えば、1日につき、15分単位や30分単位などで計算といった形にされていませんでしょうか?

残業時間は日々1分単位で計算します。3分残業なら3分、11分残業なら11分といった具合です。
これを切り捨ててしまっている会社が散見されます。

そうではなくて、切り捨てる処理をするのであれば、1カ月を合計した後です。最後の最後の処理です。
30分以上は1時間に繰り上げ、30分未満を切り捨てるという処理は認められています。
(昭63.3.14基発第150号。基発とは、厚労省労働基準局長名で発する通達のことです。)

ただし、労働者側に有利な処理をすることは、差支えありません。
(例えば、日々の1~14分の残業を15分で計算するとか、16~29分の残業を30分で計算するなどです。
計算としては楽ですが、ランニングコストが増えるという点ではお勧めはしません)
その場合は、きちんと就業規則に定めておいて、いきたりばったりの処理をしないようにしましょう。

ある月は有利に計算したけど、ある月は法律通りの処理をするというようなやり方は、
労働者が不信感を抱きかねません。統一された処理を心がけるようにして下さい。

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就業規則の作成で気を付けること①


横浜市青葉区の社労士の澤辺です。

就業規則で気を付けることはたくさんあり過ぎますので、テーマを絞ってお話ししたいと思います。

今回は、言葉の定義についてです。

就業規則には、その適用範囲があります。
特に適用範囲に断りを入れなければ、そこで働く人全員と解釈されてもおかしくありません。

例えば、正社員だけに適用される規定で代表的なものに賞与の規定があります。
この賞与の規定、アルバイト・パートには適用されないという会社が多いです。

そこで、大事になってくるのが就業規則で使う言葉の定義です。

さりげなく「正社員」とか「アルバイト」「パート」という言葉を使いました。
上記の規定、さも普通のように聞こえますが、「正社員」「アルバイト」「パート」って
何をもってそう呼ばれているのでしょうか?

「正社員」は週の所定労働時間が30時間以上で月給制の人のことでしょうか?
「アルバイト」は1日の所定労働時間が4時間以上で時給制の人のことでしょうか?
「パート」は1日の所定労働時間が4時間未満で時給制の人のことでしょうか?

どれも正しいかも知れないですし、正しくないかもしれません。

どういうこと???

となると思いますが、言葉の定義は自社が決めるということです。
法律上、正社員やパート、アルバイトの定義があるわけではありません。
※ただし、パートタイム労働法上には「パートタイム労働者」という定義はあります。会社ごとの名前の定義がどうあれ、
この定義にあてはまれば、パートタイム労働法上のパートタイム労働者に該当するという扱いになります。
厚生労働省パートタイム労働者とは

上記のように定めたのであれば、正しいということになりますし、
違う内容で定めたのであれば、それは、正しくないということになります。

同じように、よく使われる「基本給」もそうです。基本給という言葉を使う必要は必ずしもないですし、
言葉は同じであっても、会社によって、基本給の性格(例えば、何かの手当てが含まれているとか)は変わってきます。

あとは「月給制」という言葉も気を付けて下さい。何をもって月給と呼ぶのかは決まっていません。
ご参考までに、ハローワークでは、月給制を2パターンに分け、月給制(欠勤控除なし)と日給月給制(欠勤控除あり)と定義しています。※あくまでハローワークの定義です。
ハローワークの月給と日給月給
↑下の方にスクロールして(10)の賃金形態をご確認下さい。

何をもってそう呼ぶのかは、御社で決めて下さい。そして、その言葉の定義を労使で誤解のないよう、きちんと共有するようにして下さい。

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